稼働率90%は誰得か|医療介護×RPA×生成AI 事例紹介
Case Study 医療介護 × RPA × 生成AI

稼働率90%は誰得

「動いている」と「効果が出ている」は別の話。
経営層が最初に聞くべき問いを、設計に組み込む。

Case Overview

業種
医療法人(病院・クリニック・介護施設、複数拠点)
規模
数千人規模(利用者・患者・従業員含む)
導入技術
RPA × 生成AI(組み合わせ型)
開始時期
2024年
関与領域
設計・実装・効果設計・経営層報告・現場改善提示
ステータス
進行中(数値確定後に更新予定)
「RPA稼働率90%を達成しました」という報告が来たとき、経営層が最初に聞くべき質問は何か。
「それで、人件費は落ちたか」だ。

この問いを最初から設計に組み込んでいる組織は、実際にはほとんどない。導入すること自体が目的になり、効果の検証は後回しになる。医療介護の現場で今まさにそれが起きている。

01

背景 なぜ医療介護でRPA×生成AIなのか

医療介護領域は人件費率が高い。製造業のように設備投資の費用対効果を単純に適用できない業種だ。加えて、赤字経営の病院・クリニックも少なくない。「導入してみよう」と言える組織は、実は多くない。

その中で今回の案件は「困っている側からのリクエスト」として始まった。業務上の具体的な課題があり、それを解決するための手段としてRPA×生成AIが選択された。技術ありきではなく、問題ありきだった点が重要だ。

02

何をやっているか シンプルな処理、桁違いのスケール

やっていることの骨格はシンプルだ。

  • RPAで電子カルテ等のシステムを操作し、対象データを取得する
  • 日付・事業所単位に自動で分類する
  • 生成AIで文章を要約させる
  • 先月のデータと比較させる

「それだけ?」と思うかもしれない。だがこれが数千人規模を対象に、1週間以上にわたって継続稼働し続ける。

RPAだけでは処理できる範囲が限定的だ。生成AIだけでは分類・操作が難しい。組み合わせることで初めて、このスケールの処理が成立する。導入当初、想定外の件数になったのはこの組み合わせ効果によるものだった。

03

設計の基準 稼働率ではなく人件費の削減

一般的にRPA導入の成果は「稼働率」や「処理件数」で語られることが多い。だがこれらの数字は経営層にとって意思決定の材料にならない。

経営層が見るのは「払った人件費が実際に落ちたか」だ。稼働率が高くても、浮いた時間が別業務に吸収されるだけなら頭数は変わらない。医療介護は人件費率が高い分、この乖離が特に大きく出る。

今回の案件では、設計段階から以下の2軸を成果基準として設定した。

経営層向け
投入人件費の実削減量
時間 × 単価で計算。稼働率ではなく、実際にコストが落ちたかで判断する。
現場向け
業務改善量
具体的な作業工数の削減。現場が体感できる形で示す。

同じ案件を2つの言語で翻訳する。これが「導入した、でも効果が出ない」という第二の詰まり方を防ぐための設計だ。

04

介入のポイント 標準の線引きと要望の具体化

導入効果が出ない組織に共通するのは、技術的な問題より前に2つの問題がある。

① 標準をどこに引くかが決められない

局所最適を追いかけると工数が青天井になる。「事業所Aの特殊なケースにも対応したい」「クリニックBの出力形式も変えたい」という要望が積み上がり、開発が終わらなくなる。どこで線を引くかを決める人間がいない組織は、導入後に漂流する。

② 要望が具体化されていない

「もっと便利にしたい」「自動化したい」という言葉は要望ではない。何の業務の、どのステップを、どういう状態にしたいのか。これが言語化できていない段階でツールを入れても、期待と現実の乖離が生まれるだけだ。

この2点を最初に固めることが、投入時間の削減が「実際に起きる」かどうかを左右する。

05

医療介護特有の制約

製造業と決定的に違う点がいくつかある。

  • 個人情報・医療情報の取り扱いに関する制約が厳しい
  • システムがベンダー依存で、API連携の余地が限られるケースがある
  • 現場(看護師・介護士等)のITリテラシーに幅がある
  • 「止められない」業務が多く、稼働中のシステムへの介入リスクが高い

これらの制約を前提として、ソフトウェア間の責任境界を明文化する設計介入を実施している。障害発生時に「どこまでが誰の仕事か」が不明確なまま運用されている医療システム特有の問題を、構造的に解消することが目的だ。

06

現時点での状況と今後

本案件は現在進行中であり、最終的な人件費削減の数値は結果が出てから開示する。

RPAだろうと生成AIだろうと基幹システムだろうと、詰まる場所は変わらない。
技術が変わっても、この3点は変わらない。
詰まる場所 内容
標準をどこに引くか決められない 局所最適の積み上げが工数を無限に膨らませる
要望を具体化できない 「便利にしたい」は要望ではない。ステップ・状態・判断基準が必要
導入後に誰も検証しない 成果基準が曖昧なまま終わり、効果が可視化されない

継続して効果を出し続けるには、この3点が揃う必要がある。現在進行中の案件で、投入時間の削減が実現できるまでが自分の役割だ。

Consultation

本事例に関連するスポットコンサルに対応しています

  • RPA×生成AI導入の効果設計(稼働率ではなく人件費削減への接続)
  • 医療介護領域における自動化投資の費用対効果判断
  • 「導入したが効果が出ない」案件の原因特定
  • 医療系マルチシステム環境での責任境界設計
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© 兼松秀樹 コンサルティング 製造業25年 × 医療介護IT
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